ネットギア 車のコーティングの作業工程一覧へ ネットギア トップページへ
バンテンブラ・プリンセス
38年前のお車です。
他工場で全塗装した仕上げが悪く、磨きにかなりの時間を費やしました。

バンテンブラ・プリンセスのリフレッシュ
このお車は、イギリスの名車、バンテンブラ・プリンセス。
38年前の車らしい。
味があるでしょう?
細かいデティールに当時の英国のクラフトマンシップが、存分に盛り込まれている。
個人的にも、この年代の車が好きだから、尚更だが、どう料理するか楽しみだ。
今回は、足代わりということで、
「そんなに変化しないんじゃないの?」
というオーナーさんを説得して、今回こそ、真骨頂を見せたるっ!
てなことで、このバンテンブラを紹介しましょう。
今回のメニューは、ルームクリーニング、そして磨きでの塗装復元計画。


ビンテージカーのウォールナットの光沢復元

まずは、室内のクリーニングから、係る事に!
こちらのオーナーさんは、このウッドが大のお気に入り。
ですが、なんだか、白っけて映るんですね。
こういう所は、本来つる〜ん、としたような光沢があるモノなので
まずはミニポリッシャーで研磨から入る事に。
ご覧のように、光沢が若干復元しました。


塗装ダメージの修正

このゲートは、前のオーナーが全塗装されたらしいが、
「ビンテージカーだから、こんなもんか〜?」
じゃないんですよね。
オールペンにも丁寧な技術と仕上げ、雑な技術でチョイ塗装仕上げ、では
全く別物ですよね?
塗装の前に板金修理個所や、塗装に傷などがある場合に、傷を埋める修理をします。
その際に、Wアクションポリッシャーを使用して、塗膜を剥がしていきます。
次の工程は、そこへパテを盛り付け、傷を埋める作業をします。
その際に、このポリッシャーで削った跡が、もろに判別できるぐらいに
全体の8割以上に、醜い削り跡が散見されるんです。
この削り傷を隠すため、目立たなくさせるために
プライマー(サフェーサー)塗装という下処理。
これをしてから、最終の、この色を決めて 塗装をして行くんですが
どうも、この全塗装をした工場が大雑把な作業工程をした為
大変な作業をしなきゃいけないんです。
早い話が、私に言わせれば、
明らかに手抜き作業としか言いようがありません。
でなければ、あんな大きな削り傷が見える訳がないからです。
よく見ると渦巻いた感じの傷が見えますね。
これは、ペーパー目ではなく、ポリッシャーの磨き傷です。


バンテンブラの磨き入魂

この画像は、よく分かるはずです。
明らかにマシーンで均一に削った痕でしょう?
左右、上下にマシーンを回転させながら 塗膜を削ったり、
パテ盛りした後などにも このポリッシャーを使用しますが・・・
この後、ちゃんと埋める作業をしていれば
絶対に、こんな仕上がりには、なっていないはず。
幾ら40年ぐらい前の車といえども。
前オーナーのリクエストに答えて、修復して納めたわけですから
まともな職人なら、ミスを知らないで見逃すはずがない。
もし、見逃してしまったとしたら
年寄りで、もう目利きが利かなくなった。
塗装をする行為は、最終工程ですから、一番 慎重に下処理を見逃さないものです。
まあ、私もこの仕事を請けた以上、
磨きやの審美眼で追及していくしかないですね。
ハッキリ言って、これだけダメージが多いと、逆に腕が唸る!これが正直な感想です。


バンテンブラの磨き入魂

半分に仕分けて磨いたのがこの画像。
ハッキリと違いが分かるでしょう!
実は、このサンダー目を消すために、
ペーパーで研磨したのちにポリッシングして
この状態まで回復させた見本です。


磨きによるサンダー目消しの分岐点

1枚目が、ペーパーで研磨しているシーン。
この工程で、あらかた塗装し終わった痕の 出来がいいかどうかまで分かる。
ペーパーで均一に研いでいく工程で、異常があれば、均一に見えないからだ。
例えば、塗装の垂れた痕があれば、出っ張って涙目のように見える。
また、作業の工程で手の油分などが、塗装したい表面に触れてしまった場合など
塗料が乗らない現象になる。
塗料が吸いこまないため弾いて、針の穴のようになってしまう。
これを業界用語でピンホール、巣穴と呼ぶ。
この様に徹底して何工程かを 丹念に磨き込んでいけば
先程まで目立っていたサンダー目も
目を凝らしても分からないレベルまで、回復できる場合がある。
全て、うまくいくとは、限らないので、
塗膜の状態などにもよるし、
何処まで磨いていけばいいのか?
最後は、自分の技量と何処まで挑戦するか、己の腕と眼力に頼らざるを得ない。


徹底した究極の磨き

究極!と表現すると、
「大袈裟だな〜?」とお思いでしょうが、本当に真剣勝負なんです!
磨き屋にとっての究極とは?
ズバリ、磨き過ぎて塗装を剥がさないレベルの磨き
悪い塗装を磨きで目立たないレベルまでにする磨き
これは、口で言うのは簡単で
やってみると中々、勇気がいるのがホンネ。
もう重労働ですよ。
ここまで回復させるのに、一体 どのぐらい時間かかったでしょうか?
答えは、ズバリ6時間!
この位、慎重に磨いたとも言えます。
今、行っている作業は、右サイドパネルの磨き。
何度も言いますが、ペーパーを使わないと、修復できない位に仕上がりが悪過ぎなんです。


ボンネットの様子

ボンネットのパネルの話題に入ります。
ここも凄い事になっています。
マジックとホワイトペンシルで、マークしています。
ここのパーツのダメージの特徴は、
大きなブリスター(膨らみ)が2か所。
直径、約1センチとリンゴ型のブリスターもある。
肉眼で、だれが見ても判る大きなパテ痩せが、ボンネットの、ほぼ中心に直径10センチ位。
さて、これこそ勇気がいる磨きといえる。
画像では、あまり判りにくいでしょうが、パテ痩せしている部分は渦巻き状にも見え
さらに、塗装の艶がなく、その部分だけが白っぽく見えるから、素人でも見えるレベル。
この厄介なダメージを、果して、どこまで改善できますやら。


ペーパー研磨の工程

これが、研磨した後のダメージの画像。
ハッキリと見えますよね?
凹凸の凸を削ると、ご覧のようになります。
先ほど紹介したブリスタです。
この頭の部分が削れ、ご覧の様な丸い形状にみえます。
一つは、涙目のようでしょう?
何で、こうなるのでしょうかね?
塗装の垂れならば、塗料の塊ですから安心ですが、ブリスタ(水膨れ状)だと大変リスキーです。
膨らんでいる部分の下が、空かすかもしれないからです。
これは、水分や湿気などが塗装表面の下に残っている為、外へ出ようとする作用が働きます。
その下が、空間の場合だと、1発で塗膜を剥がしてしまう危険性が大です。
そういう危険性を確認する為、
指で膨らんだ個所を上から抑えてみて
ぶくぶくする様なら、削らない方がいいという判断をします。
それほど、シビアーな作業だと言えます。
削り過ぎたら、塗装の下地まで到達します。
つまりと生を剥がしたということになります。
こうなったら、ボンネットを1枚塗るしかない。
軽く1回ペーパー研磨しただけで、これですから、緊張しますよね。
どこまで許せる範囲か? ここが勝負どころです。
ペーパーで研いだ後は、ご覧のように真っ白くなります。
塗装表面に、クリアー塗装をしてある場合
この透明の部分の上を削る為、粉状になるんです。


ボンネットの修復の為の磨き

ようやく磨きを終え、コーティング加工も一通り終え
ホッとしているところ。
今晩までには、すべて完成して納車するのみ。
このシーンは、ペーパー研磨した後に、いよいよ磨きにかかっているシーン。
中々、一筋縄にはいきません。
慎重に異変のある個所を追及しながら、その都度磨いて幾分
どうしても進捗が良くない。
完成までに約4日を要した計算となりました。


ボンネットの磨き

もうすぐこのこの車のオーナーさんが、お引き取りにみえる時間です。
これが完成した画像。
大方ダメージは跡形なく消えた。
緊張の連続でした。
再塗装しなくてすんで、ホッとしています。

ネットギア 車のクリーニングの作業工程一覧へ ネットギア トップページへ